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再び世に出た光秀の愛刀「近景」

(一)由緒刀探索の日々

 

近景刀(備州長船住近景造)

 これまで私は、史上におけるあきらかな由緒をもった刀剣、あるいは伝説の名剣などの探索、発見につとめ、その史的考証に携わることを自己の責務のように励み、またたのしみとしてきた。

 中でも特に力を入れてきたのは井伊家に係る刀剣とその史料調査で、かねてより探索の手を伸ばしてきたのは外部流失の刀剣類であった。尓来半世紀。年数をかけたわりに、成果は誇示するほどではないが、それでも史上著名な由緒刀剣のいくつかは発見し、またその一部は『刀剣美術』(日本美術刀剣保存研究会)誌上において発表してきた。——(HPの「井伊達夫 刀剣甲冑関係主論文」参照)

 思い出すままにその主たるものを回顧してみると『本阿弥光徳刀絵図』(石田三成のため、光徳が著名の刀剣押形を作って呈上したもの。三成自身の所有刀剣押形と思われる)所載の了戒(短刀)、包氏(短刀)。佐竹家重代の名物典厩割国宗(上杉謙信)、無布施経(ふせないきょう)真長(松平忠長)、𠀋木(享保名物帳所載・前田利家)、虎御前(伝承名物・竹中重治)等々…。

 今話題の石切丸兄弟刀(有成)、三条吉家(伝鵜丸)、兜割高平(小笠原家重代)、その他井伊家関係を入れると結構枚挙に遑が要る。しかし、この一方で調査したが、その伝承に信を措けないものが無数に存在したという虚誕伝承の事実も数多く知った。そして感じたことは、世上「…公拝領」「…家伝来」という鍍金の冠を飾りつけた刀剣類がいかに多いかということである。歳月とともに幾多の刀が眼前にあらわれ明滅しては消えた。そこでまた新に感じ心に決めたのである。広大無辺といってよい刀剣伝説、史話の考証研究の重要性を知り、更にその道に精進することを。…

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