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『木俣土佐守守勝武功紀年自記』なる自伝記録
——擬書の造作とその意図についての考察——
​井伊達夫

〈1〉

 

 

 

 

  毎年、六月(本稿稿筆時)という月を迎えると、筆者は明智光秀の「本能寺の変」を想起する。この謀反は日本近世史上数ある主君あるいは上司弑殺事件中筆頭に録されるもので、歴史が苦手でも我が国の人なら「本能寺」と聞けば「信長殺し」、そして光秀と脳裡に連想されるのが一般である。

 筆者が本能寺の名に係って即座に信長のことをある感懐をもって想起するのは、他に大きな理由がある。 

 この事件の実行者である明智光秀と事件前年まで主従関係にあった人物と、その人と光秀にまつわるゆかりの品、文書史料、更にその人に仮託して造作された一種の擬書等々。それらを井伊家文書の採集と調査の過程で発見したことである。特に表題の擬書と考えられる書冊は、封建社会における自家の「家名由緒宣揚」のために造作されたものと考えられる。この事実は現在のところ該文書の「写本(筆者は現資料を実見していないが副次的写本と思われる)」を所蔵する彦根城博物館や一部歴史史料館の関知しない所である{念のためいえば「擬書」とはある歴史事項ないし書冊をある人物の作に擬(なぞら)えて著作した書物や本のことをいうが、近代にその代表例をとると小説ではあるが、森鴎外の「興津弥五右衛門の遺書」がある}。

 

  擬書ながらその成立過程を考察することは、当時家名の由緒をいかに史上の有名人と係り合わせることが重要な家柄評価のポイントであったかを証明する意義ある作業であると考えられる。

​令和7年7月13日

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