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★取材協力(3月3日 於:井伊美術館)

NHK BSプレミアム 「英雄たちの選択/開国の“守護神” 井伊直弼の苦悩と誤算」(仮)

 「安政の大獄」において反対勢力に大弾圧を加え、独断で日米修好通商条約に調印した冷徹な政治家として知られる井伊直弼。しかし一方で、直弼の極めて人間的な真の姿を伝える史料が井伊館長によってかなり以前に発見されていたこと、そして近年になってそれが公表され、漸く識者の間に認識されはじめたことは余り知られていません。その史料は、『公用方秘録』の原本を浄書した写本です(専門的な分類は一般にわかりにくいので、仮に「原写本」と略称します)。もとは直弼のブレーンであった公用人宇津木六之丞景福が記録したものですが、館長の発見によって、実は完全なものがこれまでには存在していなかったことがわかりました。  これまでは旧来からあった彦根井伊家旧蔵本の『公用方秘録』及びその写し物一類が正しいものと信じられていました。ところが、これらは明治になって旧藩関係者によって大幅に削除や改竄を施されたものであることが、原写本の発見によって判明したのです。

 この『公用方秘録』の原写本を、館長はその来由を尊重して『彦根藩公用方秘録―木俣本』と命名、40年以前ごく簡単な解説のみにとどめた影印本として限定出版(1975)しましたが、都合50年に近い歳月、つまりおよそ半世紀の間、一部史家を除く他一般にはその由緒や歴史的重要部分を明かすことを控えていました。それは俗にいってしまえば「井伊直弼英雄神話」に対する配慮のため、もう少し理想的にいえば、「井伊直弼」が聊かでも公平冷静に認識判断される時代まで、その刻をまったということです。是非善悪をこえた「歴史と人物」の検分覚知には、ファナティックな視線は禁物です。大儀なことですが、歳月が必要でした。  既述のごとく旧来の『公用方秘録』(彦根井伊家旧蔵本)は後人によって大きく書き換えられているという事実が隠されてきたため、そのまま直弼伝の中心核をなす真実の第一級史料として汎用されてきました。しかし、直弼の政治的真実を伝える『彦根藩公用方秘録』原写本の発見と公表によって、従来の直弼のイメージは大きく書きかえられることになります。そして今やこの書冊は、幕末の直弼の政治行動を正確に伝える最も史料的価値の高い歴史資料となったのです。  歴史のエポック、真実を伝える史料の護持と公表のタイミングをはかることは、強い忍耐と決断を要します。半世紀に余る蓄積の史料をもとにしたライフワーク「井伊直弼史記 ―雪の朝に向って―」を執筆中の井伊館長にとっても、今回の番組における取材協力依頼は時宜を得たものと感じられたようです。  オリジナルである原写本の『公用方秘録』がどのように扱われ、そしてそこからいかなる表情の直弼があらわれるのか。「番組」としてモチーフやテーマがある程度用意された一定の枠組みの中では、取り上げ方にも限度があるとは思われますが、興味あるところです。 (『公用方秘録』及び「井伊直弼史記 ―雪の朝に向って―」(抄録)についてはリンク先をご覧ください)。                                               (2015.03.04)

《番組内容》―制作企画書より―  歴史のターニングポイントで、英雄たちに迫られた選択。その時、彼らは何を考え、何に悩んで一つの選択をしたのか? その時の彼らの心の中、脳の中に迫る歴史番組『英雄たちの選択』。今回は、日米修好通商条約締結の中心となった井伊直弼にスポットをあてる。  井伊直弼は、独断で通商条約に調印した「開国の英傑」、あるいは「安政の大獄」において反対勢力に大弾圧を加えた冷徹な政治家として知られているが、反面「水戸殿に睨まれればどんな災難があるか分からない」と前水戸藩主・徳川斉昭を恐れるなど、人間的な一面を伝える史料も残っていることはあまり知られていない。また近年、通商条約に関する新史料が公開され、条約締結にいたる詳細な経緯が明らかになった。そこには、独断専行のイメージとは裏腹な、朝廷や臣下に配慮を怠らない実直な井伊直弼の姿が描かれている。  番組では、名君として領民に慕われていた彦根藩主井伊直弼が、列強による植民地化という国難に当たって、幕府の最高責任者大老に選出され、文字通り命がけで国政に挑んでいく姿を描いていく。

◆放送は下記の通りです。  平成27年4月9日(木)夜8:00~9:00(仮)  (ほか再放送・オンデマンド放送あり)

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