★平成二十七年特別展がはじまりました。

Formal&Casual

   様々なる意匠

  ―甲冑武装の正と奇―

開催の言葉

 多少なりとも甲冑に興味があったり知識を持つ人はともかく、全く予備知識のない人が「甲冑武装の正と奇」と聞いても具体的なイメージは湧かないのかもしれません。そういう人でも例えば「朱具足」と聞けばディテールはともかく、なんとなく想像はつくと思います。では、一体どういった鎧や兜が「正」なのか、何が「奇」であるのか、文章でいくら読んでも理解するのは難しいでしょう。その「正」と「奇」―これは「正統」と「異端」という言葉に置き換えてもいい―をビジュアルでわかりやすく、かつ圧倒的なボリュームで表現できないものか、というのが本年の展示の趣旨と言ってしまえば簡略すぎるでしょうか。  昨年の大河ドラマの件ですが、岡田准一の黒田官兵衛はおそらくお椀をひっくり返した形の兜を着用していたはずです。ドラマの中ではもしかしたら大水牛の脇立が付いた桃形兜も登場したかもしれません。時代劇には縁遠く初めて目にする人にとっては「ナンだ、あれは」と思った人もいるはずです。つまり、それが「奇」なのです。  しかしここでひとつ付け加えておかなければいけないのは、遺された資料から各時代のヨロイカブトの変遷を辿ることができる後世の私たちと、実際に登場したその時代に生きた人々では感覚が違うであろう、ということです。我々は各時代、地域などいろんな要素を比較したり同じ一冊の本の中で並べて見ることもできます。しかし当時の限られた情報の中で、自分の概念にはない形の鎧や兜を初めて目にしたときの衝撃は、我々の比ではありません。そのインパクトは相当なものであったはずです。  展示においては難しいことは横に置いて、大鎧・胴丸・腹巻、あるいは星兜・筋兜といった「正統」と、変り兜や仁王胴といった「異端」を一堂に展観します。当館では平成十五年に「武門のステイタス 式正と異風と」をテーマに特別展を行いました。ちょうど干支が一巡し十二年を閲した本年、多くの新発見資料を交えて新たな形でこのような特別展を開催できるのは何よりの慶びでもあります。フォーマルな「正」の甲冑の威厳に歴史の重みを感じると同じく、ウワッ、何とこれは・・・とその着想に驚くカジュアルスタイルの「奇」の兜にも改めて注目、日本文化の多様性をみていただくと嬉しく思います。  また、パネル併催として新発見資料の吉田松陰自筆の辞世を中心に、安政の大獄~桜田門外の変へ至るまでの関連資料のコーナーも設けました。これも当館の多様性の特色です。                                   (2015.02.15)