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津本陽 × 井伊達夫 対談集

『史眼』-縦横無尽対談集-

当代一流の歴史作家と甲冑武具考証鑑定の第一人者が

火花を散らすホンモノ対談

平成20年刊

1,500(税・送料込)

◇井伊直政~激しい気性~◇兵法と剣の極意◇達人の系譜◇山岡鉄舟の剣術◇龍馬暗殺の真実◇映画と時代考証◇三島由紀夫と刀◇道場剣術と実戦◇試し斬りと薬◇変わり兜◇接戦・組討・乱戦◇黒備え◇商才が出世を左右する◇本能寺の変の謎◇桜田門外の変

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[新刊書紹介] 

津本陽×井伊達夫『史眼』-縦横無尽対談集-

宮崎隆旨(元・奈良県立美術館館長)

 

甲冑・刀剣の歴史考証を主体とする日本でも他にない武具美術館を経営すると同時に、近年の甲冑武具界では類をみない旺盛な執筆活動を展開されている京都井伊美術館館長井伊達夫氏が、このたび直木賞作家津本 陽氏と共著で標記の書を上梓された。小生にとっては、本誌一五八号(平成十九年八月発行)の同氏編『井伊達夫 蒐古展覧歴程集』に続く新刊書紹介となる。まことにご同慶の至りである。
 さて本書は、数多くの歴史小説をものされている津本 陽氏と、井伊達夫氏による〈対談〉と、井伊達夫氏の〈コラム〉を組み合わせた形で構成されている。「あとがき」によると、両氏の出会いは二十年ほど前に井伊氏が著書『井伊軍志』を津本氏に贈られたのに始まり、近年、津本氏が同書をベースに井伊直政を取り上げた『獅子の系譜』(文芸春秋社刊)を刊行され、それが本書の出版にもつながったという。
 〈対談〉は戦国武将や幕末の志士、剣豪たちの月旦評、著名な合戦や事件の本質、更には刀剣・甲冑に関する話などが中心になっている。また両氏共に剣道・居合道を修練した一家言の持ち主であり、特に井伊氏は誓約書交しの実戦的試合をやって来た人だけに戦場における実際の有様や、昨今のテレビ・映画に見受けられる、時代考証の貧弱さなどにも話題が及ぶ。
 ただし、予め設定されたテーマに基づいた型通りの対談集と思って読み始めると面食らう。一応三十六のテーマで区切られてはいるが、恐らく編集の際に行われたものであろう。とにかく、ご両人の広範な分野に及ぶ博覧強記には驚かされる。例えば、古刀と新刀の切れ味の話から、三島由紀夫の刀に進み、更には三島文学に及ぶといった具合で、サブタイトルにあるようにまさに縦横無尽、自由闊達、台本なしに進行する。
 もとより、ここで個々の内容まで紹介する紙幅の余裕はないので、
印象に残ったテーマとして、「坂本龍馬暗殺状況の真実」、「江戸前期の幕閣~戦乱の終息を迎えて~」、「達人の系譜」、「捕鯨と刃刺し」、「維新を駆け抜けた男たち」、「本能寺の変の謎」を挙げておく。ことに「本能寺の変の謎」は濃い余韻を残す。
 一方、〈コラム〉は井伊氏のみによる著述で、三十二編が収録されている。対談の中身を補足する形をとるが、対談に比べると一歩踏み込んだ専門性も併せ持った内容である。井伊氏が津本氏とは別の日に編集子と対談され、井伊氏はこれもそのまま対談の形式での掲載を考えられていた様だが、本屋さんの都合でこうした形になったという。たしかに専門的なコラムの部分が多く一般素人には聊か窮屈な感じがしないでもない。本対談を補足する別扱いの対談がコーナー分けにして附載されると、冗長にならずそれはそれでさらに面白かったかとも思われる。
 〈コラム〉では、井伊直孝や宇津木静区など彦根藩主や家臣に関する評伝・逸話も興味深いが、ここでは「軍学書や史伝書の評価について」を挙げておこう。歴史研究者にみられる古文書や記録・日記などいわゆる一等史料の偏重に対して、『甲陽軍鑑』と『常山紀談』を例に、軍学書や後の編纂物などにも貴重な内容が埋まっているものがあって、一等史料でないからといってむやみに切り捨てるべきではないという主張である。無論、その活用には当該書の適切な史料批判が必要になるが、近世前期以前の一等史料となると極めて乏しい甲冑武具分野の研究者にとっても、身近な問題として傾聴に値しよう。
 なお、本書には対談に出てくる人名や用語について、二百六十件(写真資料を含む)を超える脚注が付けられている。対談の理解を助けるのは勿論であるが、ミニ人名辞典・歴史用語辞典としても使用できて有益である。
 肩の凝らない好書として、ぜひ一読をお薦めしたい。

[新刊書紹介] 

津本陽×井伊達夫『史眼』-縦横無尽対談集-

田野辺 道宏
(元日本美術刀剣保存協会常務理事

刀剣博物館副館長・上席専門研究員)

日本刀にとって悲しむべきことは、前の大戦、太平洋戦争という近代戦にまで武器として駆り出されたことである。勿論そこには単なる武器としてではなく、神秘的なパワーが宿っているという思念の方に重きが置かれていたと思量するのであるが。結果的には南太平洋の島々に於ける玉砕戦法としての日本刀を振りかざしてのバンザイ突撃により、効果はなかったものの米軍を恐怖せしめた事実があった。そのため終戦直後は、日本刀は占領軍により「武器」とみなされ、その多くが接収または供出させられる運命にあった。当時の刀剣関係者はこれを憂い、占領軍に掛け合い日本刀の本質を説いて沢山の刀剣を救い出したのであるが、その時に前の戦争によって歪められこびりついた悪いイメージを払拭するために生まれた言葉が美術刀剣あるいは美術日本刀である。しかし戦後六十三年、日本刀が外国の刀剣とは異なり、機能性の他に美術性・芸術性・精神性・宗教性など様々なファクターの内在するものであることが、国内のみならず海外の研究家や愛好家にも認知された今日では、もう「美術刀剣」という言葉の役割は終わったとみてよい。素直に刀剣もしくは日本刀と呼ぶべきではなかろうか。
 時恰も、甲冑・刀剣(とくに書誌学的な分野での)の研究家として知られ、井伊美術館の館長である井伊達夫氏が直木賞作家で歴史小説をものされている津本陽氏と共著で対談様式の標記の本を上梓された。津本氏が刀剣関係者と対談されるのは、昭和六十三年の当時東京国立博物館刀剣室長の小笠原信夫氏著『日本刀の鑑賞基礎知識』以来であり、その時は「切れ味を試す」という章での短いものであった。
 前述した経緯もあり、これまで我々は日本刀を美術的な側面からのみ観るきらいがあったが、この対談を読んで日本刀は本来武器であることを改めて思い知らされた感がする。対談では三十六のテーマを設けて、文字通り縦横無尽にお互いに本音を打ち付ける内容で論断し迫力極まりないが、豊富なエビデンスを基にされているので説得力がある。誰もが知りたい「龍馬暗殺の真実」、「桜田門外の変」、「本能寺の変の謎」、「山岡鉄舟の剣術」、「宮本武蔵と二刀流」など興味は尽きず、読む者をぐいぐい引き込んで行き、いつの間にか読了させる肩の凝らない書である。印象に残ったのは、道場剣術と実戦とは全く別物であることや井伊直弼の知られざる哀話(与板藩井伊家の後裔である著者にしか知り得ない事実)、また彦根藩に於ける今日では考えられないような身分上の差別などが挙げられる。
 なお本書には、コラムや脚注が随所にあって対談の補足説明をする配慮が細かになされている。刀剣や甲冑に携わる方には是非一読をお勧めしたい。
(『刀剣美術』平成21年2月号より)

review

Michihiro Tanobe
(executive director of The Society for Preservetion of Japanese Art swords-NBTHKT-)

Mr.Tatsuo Ii who is known as a student of armor and swords, and is the director of Ii Museum published the book of the talk style by a joint work with Mr. Yo Tsumoto of the history novelist with a Naoki Prize writer. It is a thing since "the appreciation basic knowledge of the Japanese sword" (written by Nobuo Ogasawara of the General Manager those days Tokyo National Museum sword) of 1988 that Tsumoto talks with a person concerned with sword. In the chapter to "try the sharpness" then was short. 
We tended to watch a Japanese sword only from the artistic side, but I read this talk, and I feel that the Japanese sword is originally a weapon some other time till now.They make 36 themes by the talk and it is impressive by contents talking about each other's true intentions freely literally. Because it is talked based on abundant evidence, there is persuasive power."The truth of the assassination of Ryoma", "a case out of Sakurada-mon Gate", "the mystery of the Honnoji-Temple Incident", etc. are the contents which anyone want to know. The interest does not run out. It draws a reading person steadily, and it is the book which does not have elaborate shoulder letting you and finish reading all too soon. The content that I won through up to an impression is that dojo studio kendo and the actual fighting are another thing really. In addition, sympathy talk of Naosuke Ii (the fact that only the author who is the descendant of the the Yoita feudal clan Iis can know) or the discrimination in the social position in the Hikone feudal clan that it is not thought today that are not known stay in the impression,too.
In this book,,a column and a footnote are accomplished in at every turn and they supply information on the talk. I want to recommend reading to a person engaged in sword and armor by all means.

(It was omitted partly on the occasion of translation.)

​(form "sword art" February, 2009 issue)

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